【導入の動機】
同社の顧客は、国内の化学メーカーです。
国内化学メーカーは漸減しており、業界全体の需要も徐々に減っているのが実情です。
このような外部環境にあって、業界の生産性を上げられない企業は採算がとれず倒産や廃業に追い込まれている企業が出てきています。しかしながら、化学プラントは定期的なメンテナンスが義務づけあられており底堅い一定の需要があります。
したがって、業界全体の需要は漸減していても、競争相手の廃業・倒産で堅調な一定の受注はあるため、固定費を上げない生産性向上が生き残りの鍵であるとして、生産性を改善し要員を増やさずに仕事をこなす実力をつけたい、というのが、社長の当初の導入の狙いです。
【取り組みの概要】
同社がまず取り組んだのが、社員の業務データの収集です。
同社は、既にワークフローを仕組みが導入済みで、社員の業務報告が毎日行われていました。その仕組みを活用して、営業、設計、施工管理を行っている社員の毎日の活動データを収集を行いました。
同社がまず取り組んだのが、社員の業務データの収集です。
収集したデータ項目は、社員名、案件名、業務の種類、作業時間、および購入品名と金額です。この収集したデータから案件別の原価が、売上までの資金の滞留時間とセットで全て把握することができます。
このようなデータは全て会社のサーバーに毎日蓄積されます。
このデータを使って、案件別の利益と生産性の散布図を作成しています。
グラフの縦軸は案件の粗利率、横軸は生産性(面積原価利益率)、マルの大きさは売上高を表しています。
このグラフから、案件の収益性を確認します。
例えば、E案件とF案件を比べると、粗利率、売上高はほぼ同等、一方生産性はF案件0.5%/日、E案件は0.8%/日、つまり生産性では60%もE案件の方が優れていることが分かります。
これまで、粗利での案件の評価は当然行われていましたが、面積原価管理を行って初めて案件間の大きな生産性の差の気づきが得られています。
さらに、このような案件の収益性の差を分析するために以下の様な面積原価管理図を作成しています。
面積原価管理図では、売上が立つまでの間に投入された社員工数、外注、資材購買などの原価とその滞留状況を見える化されます。
幹部社員全員が会議室に集まって、主要案件の生産性の差の分析が行われました。
そこで得られた結論は、社員間の明らかな生産性の差です。
【取り組みの効果】
このような生産性の見える化による継続的な改善、PDCAを回すことで当社は以下の様な効果を上げておられます。
生産性改善のネタの見える化
相当数の案件で、案件利益率が同等でも生産性の差2倍以上
ベテランと若手の生産性の格差 ⇒ 業務の共有化促進
類似施工 ⇒ プレハブ化
利益率⇒生産性への意識転換と競争意識の芽生え
生産性・業績指標の見える化と開示
将来需要の先取り
期の後半は翌期・翌々期の受注活動
高生産性案件への受注集中
見積もり精度の向上、不採算案件の見切り
生産性が見える化されるようになったことで、生産性の差が2倍以上あるものが相当数ある事が見つかっています。さらに案件別の比較を行うことで改善改善のネタが明らかになりました。
また、当社ではこのような生産性データを全社員にすべてオープンに開示しています。その結果、社員間にいい意味での競争意識が芽生え、社長が細かく指摘しなくても社員自らの自発的な改善活動が行われる様になっています。
さらに、最近では業務の生産性が高まったことで期の後半には、翌期・翌々期の受注活動に注力できる良循環が生まれています。また、事前に利益率や生産性が評価できるようになったことで、高収益案件への資源の集中を行うことができるようになっています。
このような活動の結果、面積原価管理導入後、3期連続の増収増益、2018年度には最高益を達成しています。