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従来の目標管理の問題を解決するOKR

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1.従来の目標管理手法の問題点

■ 生産性をKPIで見える化しても生産性をあげるためには、社員が実際に行動することが大前提

私の生産性改革ブログでは、生産性を表すKPIとはどのようなものであるべきかを中心に解説しています。しかし、実際に生産性を正しくKPIで測っても、行動を起こさない限り決して生産性が改善されることはありません。

当ブログでは、生産性を改善するために目標を設定し、さらに部門や個人に展開しPDCAを回すための方法について、Googleの目標設定手法として有名なOKR(目標と主要な結果)を紹介します。

OKRの解説に入る前に、現状多くの企業で見られる目的設定手法の問題点を示します。

■ 問題1.目標の実行方法・手段は各人に任されており結果が出せるか保証がない

従来の目標は、KPIとして全社、部門、個人レベルの目標として展開されますが、それをどのように実行するかは各部門・個人に任されており、本当に効果的な改善活動が行われるかその保証はありません。

もちろん現状でも、目標達成の手段は目標設定時に当事者間で共有されますが、その手段については当事者の力量で属人的に決められることが多いのが実情です。

そのため、目標の実行時に達成困難と判断されても、その対応策は個人に任されたままであることがほとんどです。

■ 問題2.目標が共有されず各人がどのような取り組みを行っているのか不明

従来の目標は、上司と部下間での機密扱いである事が多く、関係者にもオープンにされません。
会社目標と個人の活動がどのように関連しているかが分からないだけでなく、その進捗もどうなっているかなど一般の社員と共有されることはありません。

したがって、会社の目標を全員で協力して達成しようとする機運が盛り上がることもありません。

■問題3.個人の目標設定が給与制度と連動しており、事業を大きく発展させる目標にはなりにくい

さらに、目標設定が給与制度と連動しているために、目標達成を容易にするため目標を下げるように意図的に細工したり、年度の目標が達成されると余力が残っていても活動を緩めたり、このような不具合がごく普通に起こります。

このような従来から行われてきた目標設定の結果、個人目標が達成されないとパワハラまがいの事案が多きの企業で起こっています。

2.OKRとは目標と達成の手段をセットで定義する目標設定手法

OKRは、これまで述べた問題に対する解決策となります。

■OKRの定義

  O:Object(目標) 「何を」達成すべきか?
 KR:Key Results(主要な結果)「目標」を達成する手段・モニタリングの基準

OKRでは、達成するべき目標を、何を実現するかの「目標:Objects」 と どのように実現するかの「主要な結果:Key Results」をセットで設定することで、目標達成の可能性を高めています。

  0.0 ~ 0.3 = 赤
  0.4 ~ 0.6 = 黄
  0.7 ~ 1.0 = 青

OKRでは目標の達成度を、赤、黄、青の3段階に分けて示します。
ただ、一般的な目標設定とは異なり、全ての目標を達成することを求めているわけではありません。
OKRでは日常の業務管理よりも、むしろ会社が飛躍するための目標設定を行うことを主眼としているため、目標のほとんどが達成度1.0となるような目標設定は、むしろ避けるべきであるとしています。

OKRは、会社のトップから部門、個人レベルに至る全てのレベルで目標を設定します。
下位のOKRは、上位のOKRを達成するための手段として設定されるため、下位の目標が達成されると必然的に上位の目標も達成されることになります。

さらに、設定された各レベルのOKRは全社で共有化されるので、会社の目標の実現に誰がどのように関わっているかがわかります。よって、目標達成のために他部門からの受ける必要のあるサポートが明らかになり、組織間の協調関係が強化されます。

3.OKRの歴史

■ OKRの生い立ちとインテルでの活用

インテルの元CEOアンディー・グローブはインテル在職中の1970年代、インテル流のMBO(目標による管理:Management By Objectives)を発案しました。
インテルは当時、ザイログ、モトローラと熾烈なシェア争いを行っている最中で、最終的に勝つ残りました。その主要な要因の一つが、OKRを全社展開したプロジェクト、クラッシュ作戦です。

その後、インテルで営業職として顕著な業績を上げたジョン・ドーアが、OKRの展開のためのコンサル会社を設立し、アメリカの多くの企業で採用されるようになりました。

■ アメリカにおけるOKRの展開

OKRの適用で、特に有名なのがグーグルです。
グールグの設立間もない1999年、ジョン・ドーアはグーグルの創業者、ラリー・ページとセルゲイ・ブリンにOKRの提案を行い採用されました。以後、OKRは当社の目標設定手法として今日まで使い続けられています。グーグルの驚異的な成長には、OKRが重要な役割を果たしたと言われています。

OKRはグーグル、インテル以外にも、Spotify、Twitter、LinkedIn、Airbnbなど名だたるテック企業に採用されています。成熟した大企業よりもむしろ、創業間もない成長企業で活用され効果を上げていることからも、単なる管理のための管理でない革新性の高い手法であることが分かります。

■ 日本でのOKRの展開

日本でも近年、その適用は広がっており、米国と同じくテック企業での採用が進んでいます。

メルカリ、Freee、Sansan、GMOペパボなどで既に導入されています。
また、日用雑貨の花王でも採用されており、従来の減点式の評価から自立性・多様性を重視する加点方式のOKRの長所を取り入れようとしています。

4.OKRの目標設定方法

■ OKRのレベル別の目標設定

OKRにおける組織のレベル別の目標設定では、下位の目標が全て達成されたら必ず上位の目標が達成されなければなりません。
そのために、上位OKRの「主要な結果」は、下位OKRの目標として設定されます。
上位の目標を達成するための手段(主要な結果)が下位のOKRの目標に、さらにその手段が下位OKRの目標として設定されることになります。

■ コミットOKRとストレッチOKR

ORKには、2種類あります。

必ず達成しなければならない「コミットOKR」と挑戦的目標の実現を目指すストレッチOKRです。

コミットOKRは、年度事業計画など必達の目標です。したがって、コミットOKRの達成度は、1.0が求められます。コミットOKRは、どちらかというとこれまでの目標設定に近いと言えます。

一方、ストレッチOKRは、挑戦的な目標です。
ストレッチOKRでは、達成度は0.7程度になるのが望ましいとされています。

■ チーム横断的な取り組みを促進するOKR

GAFAをはじめとして世界経済を牽引するテック企業では、毎年挑戦的な目標を設定し必死にその達成に邁進しています。

このような高い目標を毎年達成するためには、会社の力を100%発揮することが必須です。そのため、組織間の協力が極めて重要です。
しかし、一般の企業では組織が縦割りで組織間の協力が中々進まない現実です。逆に、協力するよりむしろ足の引っ張り合いを行っているのが通常です。

OKRは、「目標」を実現する手段としての「主要な結果」に、意図的に他部門の協力を含めます。
この仕組みがOKRでチーム横断的な取り組みを促進する仕掛けです。

5.OKRマネジメントの進め方

■ OKRの管理サイクル

1年を通じたOKRの予算サイクルは、年度の開始に向けた予算策定のフェーズ、各四半期ごとの計画の見直しと修正のフェーズ、毎月のOKRの評価と見直しの3つのフェーズとサイクルで実行するのが標準的な進め方です。

■ 年間予算策定のフェーズ

年間の予算策定フェーズは、年間と第一四半期の計画を立てるフェーズです。
4月が年度初めなら、1月から3月の3ヶ月くらいで計画を作成します。

まず年間の全社のOKRを計画します。
全社OKRは、幹部社員で十分に検討する事になりますが、完全に完成させる前に1レベル下の社員と計画を共有します。特に主要な結果は下位の部門で実施することになるので納得の上最終決定します。

以下、部門から個人へとOKRを展開していきます。
年間計画OKRは会社全体の計画になるので、十分時間をかけて検討していきます。

■ 四半期見直しのフェーズ

VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代と言われるように現代における環境変化のスピードはますます速まっています。

年間計画で十分時間をかけて検討しても、立てたOKRが現実に合わなくなったり優先度が変化したりで、立てたOKRをそのまま実施する事の意味が薄くなった場合は、ためらわずOKRを変更、中止します。

■ 月度見直し

OKRの見直しの基本サイクルは月次です。
月次でOKRの達成度を評価し、進捗が思わしくなければその原因を分析し対応します。さらに、必要があれば、他部門からの支援を含めたリソースを追加投入を行います。
OKRは、その進捗が全社で共有されるので、達成度の悪いOKRが見える化され部門間の協業が促進されることが期待されます。

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