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KPIを設計するために考慮すべきポイント

色々なKPIが提案されていますが、生産性向上に活用できている会社はごく少数です。当ブログでは生産性向上繋げるためのKPI設定のコツを解説します。

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1.企業のKPIの設定の難しさは、財務KPIに至るKPI連鎖の設定 

多くの企業では、業績評価のための様々なKPIを設定し、PDCAを回しておられます。
しかし、実際にはKPIの設定で大変苦労させているのが現実です。

このブログでは、KPIの設定時の考慮点を解説します。

 

KPIが脚光を浴びるようになったのは、1992年に、米国ハーバードスクールのロバート・S・カプランと経営コンサルのデビッド・P・ノートンがによって開発されたバランス・スコアカード(BSC)に関する論文がハーバードビジネスレビューに発表されてからです。

バランススコアカードとは、会社の戦略を

①財務の視点
②顧客の視点
③社内ビジネス・プロセスの視点
④学習と成長の視点

の4つの視点のKPI、つまり業績評価指標に落とし込み、目標実現をコントロールしようとするものです。

4つの視点のKPIは、下記の様な戦略マップと呼ばれる因果関係で表現され、下位のKPIから順に目標を達成していくことで、最終的には戦略目標である財務KPIを実現することが狙いです。

バランス・スコアカードの例

BSCは、会社の業績を顧客の視点も含めたKPIのつながりで捉え管理しようとした取り組みとして評価されるべきものです。
経営を定量的に評価し改善を図って行こうとする考えを日本の企業に広めた功績は、非常に大きいと言えます。

しかし、BSCを実際に適用しようとするとKPIの具体的な設計が難しという問題のため、なかなか実際の運用までには至りませんでした。

 

2.アマゾンの驚異的成長の秘密は、自らコントロールするインプットKPI 

アマゾンは、1994年のジェフ・ベゾスによって, アメリカ合衆国 ワシントン州 ベルビューで設立されました。
その後の驚異的な成長は、読者の皆さんもよくご存じの通りです。

その驚異的な成長の重要な仕組みの一つが「インプットKPI」と呼ばれるKPIです。

アマゾンでは、KPI(経営評価指標)を2つに大別しています。

  • アウトプットKPI
  • インプットKPI

アウトプットKPIとは、最終的な会社の業績目標など直接コントロールすることが難しいKPIです。

売上や利益などは、直接コントロールする事は困難でありアウトプットKPIです。
このような会社のKGI( Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、アウトプットKPIであることがほとんどです。

 一方、インプットKPIとは、社員が直接コントロールできる業績評価指標です。

例えば、欠品を防止するために設定する安全在庫量は、インプットKPIです。企業側で在庫水準をコントロールできるからです。
また、原価に関連するKPIは、基本的に自社でコントロールすることができるのでインプットKPIです。

 

皆さんの会社でも、このインプットKPIとアウトプットKPIを分けて考える事は、極めて重要です。
社員が直接コントロールして改善していくKPIと、その結果もたらされるアウトプットKPIを明確に区分し管理しないと効果的な改善に繋がりません。

特に、自ら直接管理する「インプットKPI」を選び抜くことが非常に重要です。

 

アマゾンでの例を紹介します。

アマゾンが、書籍から他の商品にビジネス範囲を拡大したとき、ポータルサイトの「追加された詳細商品ページの数」をKPIとして設定しました。

「詳細商品ページ数」の設定によって、リテール販売チームの社員の行動に変化が起こりました。
これまでアマゾンでは取り扱っていない商品を大量に加えました。
その結果、大量の在庫を抱えることになり大幅な流通センターの拡張が必要になったのです。

ジェフ・ベゾス以下のマネジメントは、すぐに「詳細商品ページ数」が、アウトプット指標である売上に繋がっていないことに気がつきました。

その後、幾度となくKPIの見直しが行われ、最終的に考え出されたインプットKPIが、「在庫がある商品が閲覧された割合」です。

つまり、商品ページをいくら追加しても、顧客からそれが見られなければ意味はなく、また、見られても在庫がなければ売上には繋がらないからです。
結果だけ見ると当たり前に見えますが、検討の途中ではジェフもこの指標に反対していたようです。

つまり、KPIの選択はデータに基づく試行錯誤が必要になるということです。

 

 

3.個人・部門の効率Upを会社の生産性Upに繋ぐKPIの設定 

KPIの設定を行う場合に、考えるべき視点がもう一つあります。

それは、そのKPIが会社全体の生産性を表すKPIなのか?、あるいは個人や部門の業務の効率を表すKPIなのか?という視点です。

私がこれまで生産性向上で支援を行ってきて感じるのが、いくら個人の効率をあげてもそれが会社の生産性、儲けに繋がっていない事例を数多く見ています。

しかし、このような視点は、まだほとんどの会社で認識されていません。

 

私は、会社の生産性と個人・部門の生産性を区別する意味で、それぞれを「生産性」と「効率」という別の言葉で区別して使っています。

  • 「生産性」:会社全体の利益を生み出す生産性
  • 「効率」: 個人や部門の業務の生産性

生産性と効率の図

上の例で示すように、製造業でいくら「加工所要時間」を短縮しても、実際の顧客の需要と乖離した生産を行ってしまうと、過剰な仕掛かり在庫が増加し決して会社の生産性が上がったとは言えません。

システム開発会社で個人の努力の結果、プログラム製作時間を短縮することに成功しても、顧客と人月単価が決まっている契約を行っていると、個人でどんなに「効率」を上げても、「生産性」は上がったとは言えず、会社の売上、利益に貢献することはできないのです。

このような例は、いくらでも挙げることができます。
日本、いや世界全体でも「効率」と「生産性」の明確な認識がなく、効果の薄い単なる感覚的な生産性改善の取り組みが行われているのが現状です。

 

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