menu

生産性評価に革命を起こした本「トヨタ式 カイゼンの会計学」

タグ:

「トヨタ式 カイゼンの会計学」

  1. 著者:田中正知
    ものつくり大学名誉教授。元トヨタ生産調整部長。
  2. 発行年:2009年4月22日
  3. 出版社:中経出版

この本は、私が生産性改善コンサルを行う切っ掛けとなった本です。


おそらく、企業の業績評価に初めて「時間軸」を取り入れた本です。
投入された原価を単にお金だけでなく時間を含めた概念を「Jコスト」と言う概念を示しました。

これは、面積原価と全く同じ概念です。

この本が出る2年前、私はある自動車メーカの生産システム構想立案のコンサル(以下、Zプロジェクト)を行っていました。
そのプロジェクトは、実は大変苦労しました。

4ヶ月で終えるはずが、実際は半年以上かかってしまいました。

その原因は、「企業の目的は何か?」という問いに対する明確な答えを持っていなかったためです。

プロジェクトは、今後10年先を見据えた生産システムのあり方を構想する、と言うものでした。
当時私は、SCM(サプライチェーン・マネジメント)のスペシャリストとして、製造業のコンサルに携わっていました。

通常のSCMのプロジェクトでは、3つの目標、「リードタイム短縮」「在庫削減」「原価低減」という目的が与えられ、それぞれを小さくする施策を立案する事がコンサルの仕事です。
このように目標がはっきりしていると、それぞれを達成するための施策案いくつか検討し評価することで答えを出すことができます。

 

しかし、Zプロジェクトでは、具体的な目標は与えられていませんでした。
次世代のあるべき生産システムを検討するという目標の曖昧なプロジェクトでした。
そのため提案した施策の評価軸がなく、何を持ってあるべき姿とするかの基準がありませんでした。

 

他社の先進事例を提案したりITツールを提案したりしましたが、納得して頂く事はできません。

また、上記に述べた「LT短縮」「在庫削減」「原価低減」の視点から施策を評価してみたりしましたが、やはり担当役員の納得を得ることはできませんでした。

 

「LT」と「在庫」と「原価」の間にはトレードオフ、つまり一方を良くすると他方が悪くなる、あちらを立てればこちら立たずの関係があります。

つまり、トレードオフのある施策案を並べてみても、どの指標を重視するかで評価は変わり、結論を出すことがなかなかできないのです。

 

とはいうものの、何とか検討を重ねプロジェクトを終了させることはできましたが、それ以来ずっとこのことが、私の頭の中に残っていました。

それから約2年後、東京駅の本屋で「トヨタ式 カイゼンの会計学」を手にとった時の事が今でも忘れられません。
正に、目から鱗の経験でした。

そこには、「企業の目的とは何か?」が書かれてあったからです。

実は、この本には原価に関する難しいことは書かれていません。
本当の儲けとは何か?が、牛と馬と鶏を育てて売るときに、どれが一番儲かるかということが書かれているのです。

馬が一番高く売れます。鶏は安くでしか売れません。豚は中間です。
ただし、馬は育てるのに長期間かかるのでお金が寝ます。
鶏は安いですが早く売れるので資金の回収は速いです。

 

この本の設定では、面積原価利益率は、鶏が最も高く、次いで豚、馬の順で設定されています。
つまり、利益率が最大の馬よりも、利回りでは鶏の方が良い、したがって本当に儲かるのは鶏だと言うことが、
この本では丁寧に解説されているのです。
企業の目的は、利回りで評価すべきではないかと言うのが、この本の主張です。

「本当の儲け」というものを大変わかりやすく解説している本です。
是非、ご一読されることをお勧めします。

お知らせ

  • サイトをオープンしました